はじめに:私が、万年筆という“小さな宇宙”に取り憑かれた理由
はじめまして。
万年筆情報ブログ「毎日万年筆」の管理人、「cocoa」と申します。
数えきれないほどの万年筆サイトの中から、この場所を見つけてくださり、誠にありがとうございます。
この出会いに、心から感謝いたします。
私がこのブログを立ち上げた理由は、至ってシンプルです。 それは、**「万年筆という、人類が生んだ最もパーソナルで美しい“表現の道具”の魅力を、一人でも多くの方と共有したい」**という、抑えきれないほどの強い想いがあるからです。
ペン先の字幅がFかMか、インクの吸入量が1ml多いか少ないか、もちろんそれも万年筆を評価する上で重要な指標です。
しかし、インターネットの世界に溢れる無味乾燥な「スペック」の羅列だけでは、万年筆が持つ本来の魅力の、ほんの表層しか語ることはできません。
紙の上を滑るように走る、ペン先が生み出す官能的な筆記音。
インクの濃淡が織りなす、二つとない文字の表情。手にしっくりと馴染む軸の素材感と、完璧に計算された重量バランス。
そしてブランドが幾多の困難を乗り越え紡いできた、革新と伝統の物語…。
そうした、五感と心で深く味わうリアルな感動を、あなたと同じ一人の万年筆好きとしての目線で、丁寧に、そして情熱的に解き明かしていきたい。
そんな想いから、このブログは生まれました。
私の原体験は、まだ自分が何者でもなかった、学生時代の記憶に深く刻まれています。
祖父の書斎の引き出しを整理していた時、片隅でひっそりと眠っていた一本の古い国産万年筆。
それが、私の「最初の出会い」でした。恐る恐るインクを入れ、ノートに文字を書いてみた瞬間の、ボールペンとは全く違う、ヌルリとした滑らかな感触。インクが紙に「染みていく」様を、生まれて初めて目の当たりにしました。
またある日、書店の隅で手に取った文具雑誌のページをめくった瞬間、目に飛び込んできた一本のペリカン・スーベレーン。緑縞の美しい軸、鳥の嘴(くちばし)を模した優雅なクリップ、そして黄金色に輝く大きなペン先。その芸術品のような佇まいに、子供ながらに「これはただのペンじゃない。所有者の魂を表現するための特別な道具だ」と衝撃を受けました。
「いつか、この美しさの理由を、自分の言葉で語れるようになりたい」
あの日から、私にとって万年筆は単なる筆記具ではなく、知的好奇心を無限に刺激し、人生に彩りと目標を与えてくれる、かけがえのない存在となったのです。
私の万年筆哲学と経験:スペックだけでは語れない“筆記体験”を求めて
これまで、私は幸運にも、様々な国の、様々な思想で作られた万年筆たちと触れ合う機会に恵まれました。その一本一本が、私に新たな発見と、忘れがたい教訓を与えてくれました。
私の万年筆遍歴が教えてくれたこと
社会人になり、初めて自分の給料で手に入れたのは、一本のラミー サファリでした。週末になるとお気に入りのカフェに籠り、「書くためのデザイン」というバウハウスの思想を、その握りやすいグリップと軽快な書き味を通して、身体で理解しました。
次に縁があったパイロット カスタム74では、原稿用紙のマス目を埋めていった時の、日本語の「止め・跳ね・払い」にどこまでも追従してくる、驚くほど滑らかなペン先の動きに衝撃を受けました。「書く、を支える。」という言葉の重みを肌で感じたのです。
またある日、友人のセーラー プロフェッショナルギアを使わせてもらった時の、紙の質感を確かに感じさせる、しかし決して不快ではない独特の「サリサリ」という筆記感覚は、万年筆の奥深さを根底から覆すものでした。
こうした一つ一つの経験が、私の血肉となり、万年筆を評価する上での独自の価値基準を形作っていきました。
私が追い求める「究極の筆記体験」という価値基準
経験を重ねる中で、私が万年筆に求めるものが次第にハッキリとしてきました。それは、カタログスペックに表れる「性能」以上に、書き手の感性に深く訴えかける「筆記体験」とも言うべきものです。
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ペンフィールと筆記音 ただ滑らかなだけでは不十分です。紙の繊維を感じさせながらも心地よく滑るのか、あるいはガラスの上を走るように抵抗なく滑るのか。そして、書く喜びを増幅させるような、静かな「サリサリ」「サラサラ」という筆記音。
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インクフローと表現力 インクが潤沢に出て豊かな濃淡を生むのか、あるいは安定した細い線を描き続けるのか。インクの持つ本来の色や特性(濃淡、光沢、遊色)を最大限に引き出してくれるペンこそが、心を揺さぶります。
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バランスと素材感 キャップを嵌めて書くか、外して書くか。それぞれの状態で、重心がどこにあるのか。そして、ひんやりと冷たい金属、温かみのある樹脂、しっとりと手に馴染むエボナイトや木材など、軸の素材がもたらす触感。
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デザインの哲学と審美性 なぜこのクリップは鳥の形なのか。このリングにはどんな意味があるのか。100年後も美しいと評価されるであろう普遍的なプロポーションを持っているか。見た目の奥にある、デザイナーの意図やブランドの歴史を読み解くことも、大きな喜びの一つです。
こうした、スペックシートには決して現れない部分にこそ、その万年筆の本質的な価値や、作り手の魂が宿っていると、私は信じています。
「毎日万年筆」の編集哲学:読者のあなたへ、3つの誓い
「毎日万年筆」を運営するにあたり、読者の皆様に3つのことをお約束します。これは、当ブログの編集方針であり、私自身の決して揺るがない誓いでもあります。
1.徹底したリサーチに基づく、正確で信頼できる情報
なぜなら、万年筆選びにおいて、一つの情報の間違いが、読者にとって「こんなはずじゃなかった」という後悔に繋がりかねないことを、私自身がよく知っているからです。そのため、不確かな噂や憶測に頼ることは決してありません。全ての記事において、メーカー公式サイトの発表といった一次情報を必ず確認し、可能な限りその情報源を明記することで、記事の透明性を確保します。
2.実体験と五感に基づいた、リアルな視点
なぜなら、 万年筆はスペックシートの上ではなく、インクを入れ、紙の上を走らせてこそ、その真価を発揮するものだからです。文具店の完璧な照明の下で見た軸の輝きと、朝の自然光の下で見た時の色の深みの違い。静かな店内で試筆した時の書き味と、自分の部屋で一時間書き続けた時の疲労感の違い。そうした教科書には載っていない「生々しい情報」こそ、何より価値があると信じています。
3.初心者からマニアまで楽しめる、分かりやすい解説
なぜなら、 素晴らしい知識や感動は、独占するものではなく、共有することで何倍も楽しく、豊かになるものだからです。難しい専門用語の壁を取り払い、「なるほど、そういうことか!」と思っていただける発見の瞬間を、一つでも多く作りたいのです。万年筆の世界への第一歩を踏み出す方には親切なガイドとして、そして深い知識をお持ちのベテランの方には新たな視点を提供する対話相手として、誰もが知的好奇心を満たせるコンテンツを目指します。
この場所を、あなたと共に創るために
このブログは、私一人が完成させるものではありません。 あなたのコメント、あなたの愛用の一本の物語、あなたが感じた素朴な疑問、その一つ一つが、この「毎日万年筆」をより深く、より多角的で、より豊かな場所に育ててくれます。
ですから、どうか遠慮なさらず、あなたの声をお聞かせください。
「この記事、参考になったよ!」 「〇〇というインクについて、もっとこんな情報が知りたい」 「私の愛用の万年筆、こんなところが最高なんだ!」
どんな些細なことでも構いません。あなたからのメッセージが、私にとっては何よりの執筆の原動力となります。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。 これから「毎日万年筆」を、あなたと共に最高の場所にしていけることを、心から願っております。
【FAQ】管理人と、このブログについて
万年筆選びで迷っています。個人的に相談に乗ってもらうことはできますか?
そのように信頼を寄せていただき、大変光栄です。ありがとうございます。
大変申し訳ないのですが、現在、個別のメール等でのご相談は、時間の都合上お受けしておりません。
ですが、各記事のコメント欄はすべて拝見しております。関連する記事のコメント欄にご質問をいただけましたら、可能な限りそこで返信させていただきます。あなたの疑問は、きっと他の読者の方の参考にもなるはずですので、ぜひお気軽にコメントをお寄せください。
色々使ってきた中で、管理人さんが「これ一本だけ」と言われたら何を選びますか?
最も頻繁にいただく、そして最も答えるのが難しい質問です(笑)。シチュエーションによって「最高の相棒」は変わる、というのが正直な気持ちですが、あえて一本だけ選ぶとすれば、**ペリカンの「スーベレーン M800」**を挙げます。
圧倒的な信頼性、疲れにくい絶妙な重量バランス、インクを豊かに供給してくれる滑らかなペン先、そして眺めているだけで心が満たされる美しいデザイン。書く喜び、持つ喜び、そして信頼できる道具としての機能性、そのすべてを高い次元で満たしてくれる、私にとっての「基準」となる一本です。
レビュー記事はどのような基準で書いていますか?評価のポイントを教えてください
プロフィールに記載した**「究極の筆記体験」**という価値基準を元に、主に以下の4つのポイントを総合的に評価しています。
ペンフィールと筆記音: 紙の上をどう滑り、どんな音がするのか。
インクフローと表現力: インクの魅力を最大限に引き出せるか。
バランスと素材感: 長時間書いても疲れず、所有する喜びを感じられるか。
デザインの哲学と審美性: 背景にある物語や、普遍的な美しさがあるか。
また、一本の万年筆を評価する際は、最低でも一週間以上、複数のインクや紙でじっくりと使い込むことを信条としています。
運営者情報
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ハンドルネーム: 「cocoa」
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拠点: 歴史ある文具店が点在する街の片隅で、日々インクの色を眺めながら暮らしています
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好きなブランド: ペリカン、セーラー、アウロラ
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いつか手にしたい憧れの万年筆: デルタ ドルチェビータ、ナミキ エンペラー
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